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2006年5月30日 (火)

乾式壁

Juusetsunavi_back

【NO.034】乾式壁のウソ・ホント

「乾式壁」って、いったい何?
 乾式壁というのは、水気を使わずにつくる壁という意味。コンクリートやタイル貼り、レンガ積みなど、建設素材には水気を利用するものが多い。これに対し、水気を使わず、釘やビス止めなどで施工できる建材には「乾式」という言葉が使われる。
 では、乾式で施工される壁とはどんなものなのか。
 簡単に言えば、ベニヤ板や石膏ボードでつくられた壁が乾式壁の代表。その中でも、戸境壁(住戸と住戸の間に設けられる壁)に使われるのは、耐火性能を持つ石膏ボードだ。
 といっても、石膏ボードを1枚だけ、住戸と住戸の間に入れているわけではない。2枚の石膏ボードの間にグラスウール等の断熱材を入れ、13センチメートルから15センチメートルの厚さの壁にしたもの──それが、戸境壁として使われる乾式壁だ。
 従来、鉄筋コンクリート造の集合住宅では、住戸と住戸の間に入れる戸境壁は鉄筋コンクリートで施工するのが一般的だった。乾式壁が使われるのは、住戸内の間仕切り壁……。それは、従来の乾式壁は遮音性能が劣っていたから。つまり、お隣りさんの音がまる聞こえになるので、極力、戸境壁に乾式壁を使わなかったのである。
 それが、最近は分譲マンションでも使われるケースが増えている。それには、二つの理由があると考えられる。
 一つ目の理由は「軽量化」のためである。
 超高層マンションの場合、耐震性を向上させるため、なるべく建物を軽くしたい。そこで目を付けられたのが戸境壁。これを鉄筋コンクリートから乾式壁にすると、大幅な軽量化が実現するわけだ。
 といっても、乾式壁にして遮音性が下がると、居住者から不満がでる。しかし、現在は鉄筋コンクリートと同等の遮音性能を持つ乾式壁ができるようになった。
 それが、乾式壁が増えている二つ目の理由だ。

「乾式壁」の遮音性能は、コンクリートの壁より劣らないの?
 最上級の乾式壁の場合、遮音性は「D-50以上」となっている。これは、「隣の家から発生した音が壁のこちら側に伝わるとき、50デシベル以上小さくなる」ことを意味している。70デシベルの音が伝わると20デシベルになるなど、大幅に軽減されるわけだ。
 現在、分譲マンションの戸境壁に用いられている乾式壁は、厚さ15〜20センチメートルの鉄筋コンクリート壁に匹敵する遮音性能を持っているとされる。それが本当ならば、普通に生活している限り、音の障害はないだろう。
 ちなみに、この程度の乾式壁の場合、施工費用は鉄筋コンクリートの壁よりはるかに高く、2倍以上になることもある。施工費を安くするために採用しているのではなく、あくまでも軽量化のために採用されているわけだ。

戸境壁に「乾式壁」を用いたマンションを買って損はないの
 では、乾式壁を採用しているマンションは、まったく問題がないのだろうか──実は、いくつかの不安材料がある。
 まず、遮音性能について。
 鉄筋コンクリートの壁と同程度の遮音性能を実現するには、乾式壁を隙間なく、ぴっちり取り付けなければならない。この施工が下手だと、期待される遮音性能が出ない可能性があるのだ。
 次に、きっちり施工された場合でも、不安はある。それは、長い年月の間にぴっちり取り付けた部分がずれ、隙間ができる可能性があることだ。乾式壁が施工されるのは、主に超高層マンション。その超高層は、風の影響で微弱な揺れが発生しがち。体に感じない程度の微弱な揺れでも、長い年月の間に隙間が生じやすい。そう指摘する建築の専門家がいることも覚えておきたい。
 もっとも、以上の二つの不安には解決策がある。隙間が生じていたり、長い年月の間に隙間が生じたら、補修すればいいのだ。
 しかし、もう一つの不安は重大だ。
 それは、多くの入居者が「乾式壁」とはなにかを知らず、そして自分が住んでいるマンションに乾式壁が採用されていることも知らないことである。これは、将来に紛争の火種を残すことになりかねない。
 「乾式壁」がすぐれたものであるなら、不動産業界はそのことを正しく伝えてゆく努力が求められるところだ。

文:住宅ジャーナリスト 櫻井幸雄

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